
あなたの個性はママの宝物
10 次男くんの個性 アスペルガー症候群 2

平成24年9月頃、様々な精神的ストレスによって体調を崩してしまった次男君。大学病院まで行き検査を受けた結果、彼に告げられた診断名は「自閉症」というものでした。
・・・病院に行った当日、まずは次男君が大きく体調を崩しているということから、小児科全般を担当する医師のもとで、体の診察と問診を受けました。
次男君の体調不調は「身体的なものが原因というよりは、精神的な問題が体へと大きく関与している」とのことでした。先生は次男君にいくつもの質問を繰り返し、次男君の体調がここまで悪化してしまった原因をじっくりと探ってくださいました。
そして次男君との問診を終えた後、「体に出ている数々の症状を改善するためには、本人の心のケアを最優先し、今後しばらくはストレスの原因となっている場所から少し距離を置く必要がありそうですね」とおっしゃいました。
今回の場合、次男君の心の状態が少しずつ安定していけば、次第に体の症状も治まってくるでしょう。ということで、とりあえず気持ちが落ち込む原因となっている学校へは、少しの間お休みをいただくことになりました。
さらに先生は、このようにもおっしゃっていました。
この子の話を聞いていると、主に、人間関係に関することで心を痛めている場面が多いようですね。人とのコミュニケーションが少し苦手なようで、お友達と交流する場において、その不得意なところが大きな偏りとして出てしまうのかもしれません。
日常生活において彼の得意な分野に関してはまったく問題はないと思いますが、不得意な分野を出来るだけいい方向で伸ばしてあげられるよう、1度適正テストを行って調べてみましょうか。
と。
そして今後は、同じ院内にある「小児心療内科」へと診察を移動し、しばらくの間、小児科の先生にご紹介いただいたカウンセラーの方のお世話になることとなりました。
日を改めて、1度次男君のことを様々な方向で検査した後でカウンセリングに入りたいという指示があったため、後日次男君と一緒に検査を受けに行くことになりました。
・・・検査当日。
次男君を院内の指定された場所へと連れて行くと、検査を行う専門の方が 出迎えてくれました。
その時、どの様な検査を行うか等の説明をしていただいたのですが、次男君が受けるものは、どうやら「知能検査」だったようです。
私は専門の方からその話を聞いて、「なんでこの年になって知能検査をうける必要があるんだろう?」と少々疑問を感じましたが、以前小児科の診察を受けた際、先生が次男君の得意・不得意分野をテストで調べるとおっしゃっていたことを思い出し、「ああ、これがそのテストなのか」と納得しました。
検査が終了した数日後、その結果に基づいたカウンセリングを行っていくということで小児心療内科へと案内されました。
カウンセラーの先生に初めてお会いし、次男君の状況を説明させていただいた後、私は、数日前に次男君が受けた知能検査の結果を知りたかったので先生に聞いてみました。
すると先生が・・・
知能テストに関しては特別な問題はなかったのですが・・・
お母さん、自閉症ってご存知ですか?
とひと言。
・・・は? ・・・自閉症?
私はとっさに「ええ、自閉症という名前を聞いたことはありますけど・・・?」と先生に言葉を返すと、先生は突然「おたくのお子さんは、自閉症の一種だと思います」と言い放ったのです。
私はそれを聞いて、一瞬「キョトン・・・?」としてしまいました。
事前にもう少し説明があってからその様なことを聞けば、多少の状況は呑み込むことができたかもしれませんが、先生から何の説明もなくいきなり「自閉症」だと言われても、それ をどの様に受け止めていいのか分からないですよね(汗)
知能テストの結果にまったく問題はないのに、じゃあいったい次男君のどこが自閉症に該当するのか、私はその理由をはっきりと聞かずにはいられませんでした。
すると先生は、こう話を続けたのでした。
この子の場合、知的障害を伴わない高機能自閉症の分類に該当しているものと思われます。ひと言で「自閉症」とは言っても、そのパターンは100人いれば100様にあり、その人によって障害の出かたはまったく異なります。
おたくのお子さんの場合は、特に「社会や組織の中のルール」を学ぶことや、「人の顔を見て相手の気持ちを察する」というコミュニケーション的な部分を円滑に進めていくことが、一般の人よりも少々難しい傾向にあると思います。
・・・では、カウンセリングの先生がおっしゃった「高機能自閉症」とは、いったいどの様なものなのでしょうか?
下記に、自閉症や発達障害の子ども達を専門に診察なさっている、よこはま発達クリニックの内山登紀夫さんという医師が執筆された高機能自閉症についての詳細を引用し、説明をしていきたいと思います。
ちなみにここからの引用文ですが、自閉症に関する様々な現状をより多くの人々に知っていただきたいとの思いから掲載させていただきました。
とっても長いので、ご興味のある方はぜひ1度目を通していただき、ご興味のない方に関してはスルーしていただいて構いません (*^^*)
◇◆高機能自閉症(アスペルガー症候群)とは
★はじめに
この文章の目的は、アスペルガー症候群はどういう障害かを一般の人にできるだけ正しく理解してもらうことにあります。ですからアスペルガー症候群の子どもや大人の人の特徴についてできるだけ具体的に詳しく書きました。
最新の医学的・心理学的情報や援助の方法については簡単にしか書かれていません。援助の方法はとても大切ですが、原則のみを書きました。具体的な方法は個々の子どもによって異なるからです。
正確な診断や援助プランの作成は専門家の役割です。残念ながら日本にはアスペルガー症候群の専門家は少ないのですが、まず理解することが第一のステップと考えました。参考にしていただければ幸いです。
アスペルガー症候群は自閉症の一つのタイプです。アスペルガー症候群の子どもや大人は、①他の人との社会的関係をもつこと、②コミュニケーションをすること、③想像力と創造性、以上の3分野に障害を持つことで診断されます。典型的な自閉症も同じように、3分野の障害(以下「3つ組の障害」と呼びます)を持っています。
これからアスペルガー症候群の子どもの特徴について説明していきます。子どもと書いてあっても、ほとんどの事項は思春期や成人のアスペルガー症候群の人にも当てはまります。
上記①の、社会的関係をもつことというのは、他の人と一緒にいるときに、どのように振る舞うべきか、ということです。②のコミュニケーションとは自分の思っていることをどう相手に伝えるか、そして相手の言いたいことをどう理解するかということです。最後の③想像力と創造性の問題は、ふり遊びや見立て遊び、こだわりと関係します。
◇◆アスペルガー症候群の定義は一つではありません
大きくわけて、アスペルガー症候群の定義は二つあります。
一つはウィングらが提唱し、イギリスを中心にヨーロッパで主に使われているアスペルガー症候群の概念、もう一つは、DSM-IVやICD-10などの国際的な診断基準で定義されているアスペルガー症候群(これはICD-10の呼び方でDSM-IVではアスペルガー性障害と呼ばれます)の概念です。
本書はウィングらの考え方を基本にして書かれています。日本やアメリカではDSM-IVの考え方を採用する専門家もいます。ICD-10やDSM-IVのアスペルガー症候群は、認知・言語発達の遅れがないこと、コミュニケーションの障害がないこと、そして社会性の障害とこだわりがあることで定義されます。
ウィングの考えではアスペルガー症候群も3つ組の障害があることで定義されるので、当然コミュニケーションの障害も併せ持つことになります。ですから同じ子どもが国際的な診断基準を適用すると自閉症であり、ウィングの基準で考えるとアスペルガー症候群となることも少なくないのです。
あるクリニックでは、アスペルガー症候群と診断された子どもが別の病院では自閉症と診断されることはありうることです。
◇◆アスペルガー症候群と類似あるいは同じ意味の障害
高機能自閉症、高機能広汎性発達障害などは、アスペルガー症候群とほとんど同じ意味で使われることがあります。高機能自閉症とは知的な発達が正常の自閉症のことです。
高機能自閉症とアスペルガー症候群が同じなのか異なるかについては研究者によって意見が異なりますが、ウィングは、少なくとも臨床的には区別する必要はないとしています。
本書でも、アスペルガー症候群と高機能自閉症を区別しないで使います。
本書でアスペルガー症候群について書かれていることのほとんどが、高機能自閉症についても当てはまると思ってください。広汎性発達障害という呼び方はICD-10やDSM-IVの呼び方で、広義の自閉症と同じ意味です。
アスペルガー症候群も高機能自閉症も、広汎性発達障害に含まれます。なお、DSM-IVの自閉性障害とICD-10の自閉症とはほとんど同じ意味で使われます。他者への関心が極端に乏しく、こだわりが強い、いわゆる典型的な自閉症のことを指して「カナー型の自閉症」ということがあります。
「非定型自閉症」「特定不能の広汎性発達障害」といった場合は自閉症の症状が典型的には現れていないが、自閉症の症状のいくつかが明らかに存在する場合を指します。
「自閉症スペクトラム」はウィングが提唱している概念で、3つ組の障害が発達期に現れる子どもたちを総称しています。広汎性発達障害とほぼ同じ意味ですが、より広い範囲の概念です。
◇◆自閉症とはどこが違ってどこが同じなのでしょうか
自閉症とアスペルガー症候群はひとつながりのもので、どこかで厳然と二つに分かれるもの ではありません。幼児期には典型的な自閉症の特徴を持つ子どもが、思春期になるとアスペルガー症候群の特徴が目立ってくる場合もあります。
強いて区別して言えば、アスペルガー症候群の子どもや大人は、一見して障害があるようには見えないことが多いのです。話もできるし、勉強なども人並み以上にできることがあります。人前で独り言を言ったり常同運動をしたりすることは稀です。一見自閉症にみえない自閉症といっても良いでしょう。
教育や援助の方法で大切なことは、3つ組の障害をもっているかどうかです。
アスペルガー症候群と自閉症、そしてそのどちらの特徴も持っている場合も合わせて3つ組の障害があれば、自閉症スペクトラムと総称することをウィング は提唱しています。アスペルガー症候群でも自閉症でも3つ組の障害があれば、教育や援助の方法は共通しているのです。
◇◆アスペルガー症候群なら誰でもある特徴
アスペルガー症候群にも自閉症にも、「3つ組の障害」がみられます。以下、「3つ組」について説明していきましょう。
独特の人付き合い(社会性の問題)
アスペルガー症候群の人の人付き合いの特徴を一言で述べれば、人の中で浮いてしまうことが多いということです。幼児期には一人遊びが中心です。他の子どもと遊ぶことは少なく、遊んでも年長の子にリードされたり、年少の子と同レベルで遊ぶことが多いのです。
つまり、同年齢の子どもと対等の相互的な遊びをすることがとても難しいのです。
【 主な特徴】
・正直すぎる
・同年齢の子どもと波長があわない
・積極的すぎることもある